年金受給開始時期についての選択肢
年金受給開始時期をどう選ぶかは、老後の生活設計において重要な決定事項です。原則として65歳から年金を受給することができます。ただし、受給開始時期を60歳から75歳までの間で自由に選ぶことができます。この選択には、60～65歳までに開始する方法と、65～75歳で受給開始する方法の二つがあります。それぞれにメリットとデメリットが存在します。
繰り上げ受給
本来の受給開始年齢は、65歳からですが、早めに年金を受け取ることを指します。繰り上げ受給は、60歳から64歳までの間で選択することができます。
メリット
- 早期に収入を得ることができる: 繰り上げると、早めに収入を得ることができます。生活資金に余裕ができ、日々の暮らしにおける不安を軽減することができます。また、在職のままで受け取りを選択することも可能で、生活資金の余裕ができます。
- 長期間収入を得る: 受給期間が長くなり、受け取る年金額が多くなる可能性があります。早くもらう事で元気なうちに出来ることが増えることもあります。
デメリット
- 受給額の減少: 本来の受給額が減額されます。具体的には、0.4%/月の減額率で、最大24%減額されます。これにより、月々の生活費が圧迫される可能性があります。昭和37年4月1日以前生まれの方の減額率は、0.5%（最大30％）となります。これは、令和4年4月に改正されました。
- 長期間支払う税金: 受給開始から長期間にわたって税金を支払う必要があります。税金の負担が増える可能性があります。各種所得控除もあり、早めたから負担が増すのでは有りません。在職したまま需給する場合、収入に応じて年金の減額もしくは停止措置があります。合計額は、この投稿時点では50万円/月を超えた分について減額等が行われます。
- 他の社会保障への影響: 社会保障制度（例えば、介護保険料や健康保険料）にも影響が及ぶ可能性があります。これらの費用が増える可能性も考慮する必要があります。
繰り下げ受給
本来の受給開始年齢である65歳よりも後に年金を受け取り始めることを指します。繰り下げ受給は、66歳から75歳までの間で選択することができます。令和4年4月に法令が改定され、それ以前は繰り下げが出来るのは70歳まででした。
メリット
- 受給額の増加: 繰り下げると、1か月繰り下げるごとに受給額が0.7%増加します。最大で84%増加（75歳まで繰り下げた場合）するので、将来的に高額な年金を受け取ることができます。
- 税金の負担軽減: 繰り下げることで、開始までの総収入を抑え、税負担を軽減する可能性があります。また、受給開始後も高額な年金を受け取れるので生活資金を安定させることができます。
- 他の社会保障への影響軽減: 繰り下げを選択することで、他の社会保障制度（例えば、介護保険料や健康保険料）の負担が軽減される可能性があります。
デメリット
- 収入の遅延: 繰り下げを選択すると、収入を遅らせることになります。これにより、早期退職後の生活資金が不足する可能性があります。特に、退職後の数年間をどうやって生活するかを計画する必要があります。
- 収入期間の短縮: 繰り下げを選択すると、受給開始が遅れるため、結果として受給期間が短くなる可能性があります。長生きをしなかった場合、総受給額が減少するリスクがあります。
- 他の収入源への依存: 繰り下げを選択すると、その間の生活費を他の収入源（例えば、貯金や投資収益）で賄う必要があります。これにより、投資リスクが増加する可能性があります。
結論
年金受給開始時期の繰り上げや繰り下げは、各個人の資産保有状況やニーズに応じて変わります。個々の状況を正確に慎重に検討する必要があります。繰り上げると早期に収入を得ることができる一方で、受給額が減少します。繰り下げれば受給額は増加するけれど、収入を遅らせるデメリットがあります。
どちらが最適かは、個々のライフプランや健康状態、他の収入源、税負担などを総合的に考慮する必要があります。将来の生活設計をしっかりと立て、自分にとって最も適した選択をすることが重要です。
この問題は、単純な年金額の増減だけでなく、長生きのリスクや健康問題なども重要で、早くもらって自由に使って楽しい人生を送ることもありです。しかし、老いが進むと少ない資金での生活も楽ではないと言う事も想定しておくべきです。
また、年老いてから多額の年金を受け取ったのに健康に問題が出てしまい、自由に旅行などにも行けないならたとえ資金に余裕があっても楽しくないですね。年金以外の資産保有が老後の生活に影響します。持ち家なら住居費が賃貸より負担が軽くなります。株式などの資産運用で余裕を作る事も大事です。このように他分野の知識も加味することが非常に重要で、FPなどの専門知識を有する専門家のアドバイスを参考にすることも必要です。